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第7回 「透明マントの物理学」

2014年度第7回ポスターサムネイル

 
■ 日  時 : 11月22日(土)午後1時~2時30分
■ 場  所 : 千代田校本館4階ラーニング コモンズ内
■ タイトル : 「透明マントの物理学」
■ 講  師 : 社会情報学部社会情報学科 落合友四郎 准教授
■ 対  象 : 本学学生・卒業生・教職員、千代田区在住の方
■ 参加方法 : 入場無料
本学学生・教職員・卒業生は当日直接ラーニング コモンズに
おいでください。
千代田区在住の方は、事前に電話で参加登録をお願いいたします。
電話 03-5275-6013 (千代田校本館)



 


<講師からのメッセージ>

透明マントの物理学とは、電磁気学などの物理学を用いて、いわゆるハリー・ポッターの透明マントの作り方について研究する物理学の研究分野です。透明マントとは、その装置の内部に空洞があり、何か(たとえば花など)をその中に置くと、外側から装置を見た時に、内部にある花を含めて装置全体を透明に見せる装置です。蜃気楼など、光の経路が物質を通ることによって曲がることを利用して、透明マントのようなものを作り出すことが現実性を帯びてきています。今回、透明マントの物理学をやさしく解説します。
 


2014年度第7回ラーニング コモンズ・イベント「透明マントの物理学」は、終了しました。ご参加ありがとうございました。

.:*★イベントレポート★*:.

落合先生  関連資料  

図書館千代田校本館で11月22日(土)、社会情報学部社会情報学科 落合友四郎准教授を講師に迎え、本年度第7回ラーニング コモンズ・イベント(LCE)「透明マントの物理学」を開催しました。
皆さんも一度は想像したことがあるでしょうか、かぶることで自分が透明になることができる「透明マント」――。この透明マントに関する論文を、落合先生は日本人研究者として初めて発表、その論文は雑誌、新聞、テレビに取り上げられました。今回の講演で先生は、物理に興味があるけれどもあまり得意でない学生から、他大学の理学部で物理学を専攻している学生まで、幅広い参加者を前に透明マント研究の現状について、わかりやすく丁寧にお話くださいました。以下に講演の内容を紹介します。

透明マント研究の歴史はまだ浅く、2006年、イギリスのジョン・ペンドリー氏らによって最初に透明マントの設計方法が理論的に提案されました。
私たちは、ある物体が反射した光を目に捉えることによって、その物体の形・色などを認識し、”物体を見る”ことができます。もし透明に見せたい物体を迂回(うかい)するように光が進めば、その物体は光を反射しないため、物体の後ろにある背景が見える、つまり、物体がそこに存在しないよう目に映ることになります。【右図参照】ペンドリー氏らは、光を含む電磁波に対して自然界の物質にはない動きをする人工物質「メタマテリアル」を使えば光を迂回するようコントロールでき、透明マントが可能になると考えて、その理論的設計方法を考案したのです。(メタマテリアルは「メタ」が「超越」、「マテリアル」が「物質」という意味です)
同じ2006年、ペンドリー氏らの理論に基づき、アメリカのデイヴィッド・シュリグ氏やデイヴィッド・スミス氏らをはじめとするペンドリー氏のグループは、電子レンジや携帯電話で使われている「マイクロ波」の領域で「透明マント」になる装置の開発に成功しました。この装置は同心円状のリング型で、中心部分に物体を隠す空洞部分があり、リング上にメタマテリアルが無数に配置されているというものです。
そして2008年、落合先生の研究グループが、電磁気現象を説明する「マックスウェルの方程式」を使って2次元の等方性マテリアルを用いた完全な透明マントを理論的に設計しました。等方性マテリアルで反射や時間遅れのない透明マントの「設計図」が完成したのです。
しかし、実際に人間の目で見えないようにするには、可視光(肉眼で見える光)を巧みに曲げるメタマテリアルが必要です。メタマテリアルは金属でできた微細な構造体ですが、光の波長が短いほど構造体の大きさを小さくすることになります。波長が1メートルから1ミリメートルほどのマイクロ波に比べると、目に見える可視光の波長は約380~780 ナノメートル(1 ナノメートルは100万分の1ミリメートル)と短いため、現在の技術では可視光領域で機能する超微細なメタマテリアルを作製するのがとても難しいのです。
そのため、現時点では人間の目に対する透明マントはありません。ただ、科学がもっと進歩し、メタマテリアルの開発がさらに進めば、将来的に実現するかもしれません。

*ここで述べている透明マントとは別の仕組みで、「再帰性反射材」という特殊な素材を使った透明マントと呼ばれるものがあります。こちらは、プロジェクターで投影した背景をマントに当てて、あたかも透けているように見せるものです。


イベント中の様子

講演後、参加者から「物理を学んだことのない私ですが、興味があるだけで充分楽しめました。少人数で先生との距離が近く、質問がしやすい雰囲気なのも良いと思いました」「今回のテーマ『透明マント』は“空想上のアイテム” “魔法”として認識していたので、理論上でも実現が考えられるレベルのことなのだと感動しました」と感想が寄せられました。